センサー付きウエアを利用した「暑さ対策」、アシックスとNTTが共同実験開始

 アシックスとNTTは都内で記者会見を開催し、センサー付きウエアを利用した「暑さ対策」に関する共同実験を開始すると発表した。アシックスのウエア設計技術とスポーツ生理学研究で培った温熱快適性評価技術に加え、NTTの生体情報センシング技術、デバイス開発技術を連携させることで、暑熱環境下における一人ひとりの温熱的な人体への負担をモニタリング可能にする。センサー付きウエアのプロトタイプの開発が成功したことを受け、共同実験をスタートさせる。 アシックス スポーツ工学研究所の田川武弘部長は「これまで気温と湿度を自由に設定できる人工気象室で暑熱環境下を再現して基礎実験を行ってきた。フィールドで実際のデータ取得も進めている。今回、快適性を評価する際に、衣服内の温度や湿度に注目し、それが背中の上部で、その信号が暑さ対策になるという知見を持っていた。それをウエアに実装するデバイスの開発は、NTTの技術を利用して、共同で暑さ対策となるセンサー付きウエアの開発に取り組んだ」と話した。 日本の夏は、熱帯夜や猛暑日が増加し、酷暑が続いている。地球温暖化により、この100年で世界の平均気温は0.73度、日本では1.19度上昇している。暑さ指数(WBGT値)は、熱中症のリスクを事前に判断するためにアメリカで1954年に開発されたもの。屋外の場合、0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度という算出式で導き出される。暑さ指数が28℃を超えると熱中症リスクが高まる。暑さ指数の情報提供地点は全国840ヵ所で配信されているが、個人の特徴や置かれている状況によって温熱的な身体への負荷は異なり、個人は十分カバーできていない。センサーは背中の上部に配置する。黒球温度(日射熱温度)はセンサーの表側、乾球温度と湿球温度は衣服内の温度を計測することで精度を高め、個人の温熱的な負担を反映した指標をつくる。 NTT研究企画部門担当部長の森内一成氏は「トランスミッタ内蔵センサー端末(プロトタイプ)は、日射熱温度センサー、衣服内の温度・湿度センサーなどで構成している。hitoeでは心拍数などが計測できる。3軸加速度センサーにより、活動を始めると自動的にスイッチが入る。重量11㌘の中に多くの機能を盛込んだ。自分がいまどのような状態にあるかを把握するために、スマートフォンにそのデータを表示する。スマートフォンにブルートゥースで送るトランスミット機能を持つ。外の環境と衣服内の環境を混ざらないように同時に測る。衣服は計測しやすいよう着圧が緩く、風が抜けるシャツとした」と語った。田川部長は「個人別の暑さ指数により、新たな体調管理手法を確立する。フィールドテストの結果、個人別の暑さ指数(暫定)は、暑さ感覚とほぼ合致するデータが得られた。今後、センサー付きウエアを改良し、より快適にする。実験規模を拡大し、幅広い年齢層のデータを取り、個人差を把握する。同じ人でも環境が違うと、どう変わるか、フィールド試験で確認する。熱中症の専門家と連携する。暑熱環境下における新しい体調管理手法を確立し、暑さ対策に役立つ体調管理ウエアの実用化を目指す」と話した。これら実験データから得られる知見をもとに、2020年夏までに、暑さ対策が必要とされる暑熱環境下で作業する人々の体調管理手法を確立する予定。