富士通、スーパーコンピュータ「富岳」性能ランク世界一獲得

 富士通は6月22日、理化学研究所(理研)と共同で開発しているスーパーコンピュータ「富岳」が世界のスーパーコンピュータ(スパコン)の性能ランキングである第58回TOP500リストで第一位を獲得したと発表した。日本のスパコンTOP500で第1位を獲得するのは、2011年11月に第38回TOP500リストで「京」が獲得して以来。ランキングの指標となるLINPACK性能は415・53PFLOPS(ペタフロップス)、実行効率が80・87%。2020年6月時点の「TOP500」のランキング第2位は、米国の「Summit」で、測定結果は148・6PFLOPSで約2・8倍の性能差だ。 また、産業利用など実際のアプリケーションでよく用いられる共役勾配法の処理速度の国際的なランキングHPCG(High Performance Conjugate Gradient)、さらに、AIの深層学習で主に用いられる単精度や半精度演算処理に関する性能ベンチマーク「HPL―AI」においても、それぞれ世界第1位を獲得した。HPCGにおける測定結果は2925・75TFLOPSで、第2位とは約4.6倍の性能差。HPL―AIにおいても、1・421EFLOPS(エクサフロップス)という高いスコアを記録した。この記録は、世界で初めてHPL系ベンチマークで1エクサ(10の18乗)を達成した歴史的な快挙でもある。 これら3部門での第1位獲得は、「富岳」の総合的な性能の高さを示すもの。新たな価値を生み出す超スマート社会の実現を目指すSociety5・0において、シミュレーションによる社会的課題の解決やAI開発および情報の流通・処理に関する技術開発を加速するための情報基盤技術として、「富岳」が十分に対応可能であることを実証するものだ。        「富岳」は、2019年8月に計算資源の共用を終えた「京」の後継機。「京」のシミュレーション能力を受け継ぎながら、2020年代に社会的・科学的課題の解決で日本の成長に貢献し、世界をリードする成果を生み出すことを目的とし、2014年から開発が開始された。電力性能、計算性能、ユーザーの利便性・使い勝手の良さなどにおいて世界最高レベルのスーパーコンピュータとして2021年度の共用開始を目指している。完成すれば 「京」コンピュータで1年もかかる問題が数日で解けるようになり、スーパーコンピュータの活用範囲や使い方の可能性が大きく拡大する。「富岳」の魅力は、総合力で最大で「京」の100倍のアプリケーション実行性能を有する点だ。「富岳」開発の最大の目的は、現代社会が抱える様々な課題と、科学分野における重要な問題の解決に貢献することだ。具体的には、「健康長寿社会の実現」、「防災・環境問題」、「エネルギー問題」、「産業競争力の強化」、「基礎科学の発展」に関して9つの重点課題を決定している。重点課題の中には、「富岳」でビッグデータの解析を行うものもある。スパコンによるシミュレーションでは、実験や観測が不可能な現象や費用や設備の面で行いにくい実験を再現できるが、再現の規模や精度はスパコンの計算性能とアプリケーションに大きく依存する。このため、重点課題では「富岳」の高い計算性能があってこそ初めて可能になる、大規模・高精度のシミュレーションが計画されている。