応用地質、水位を簡便に計測する冠水センサ

 建設コンサルタント業、地質調査業などを手掛ける応用地質(東京都千代田区、成田賢社長)は、防災・減災やインフラ・メンテナンス、環境、資源・エネルギー分野における各種コンサルティングやICTサービスを展開する他、これらの分野に関わる高精度な計測センサの製造・販売を行っている。今回は、危機管理型水位計の現況を取材するとともに、中小河川への冠水センサや、内水氾濫を監視するための冠水センサ付きボラードへの期待が自治体から高まっていることから、同製品の特長をまとめた。 応用地質の危機管理型水位計は、一般財団法人河川情報センターと共同開発した〝洪水時に特化した低コストな水位計〟。水位変動を2~5分ごとに監視し、ゲリラ豪雨などの急激な水位上昇も〝精度良く〟観測する。昼夜を問わず(いつでも)、設置場所を選ばず(どこでも)河川水位を監視し、洪水予測高度化に貢献する。 水位の状況を5分間隔で監視しているため、急激な水位上昇も欠測なく確実にモニタできる。投げ込み型(水圧式)の水位計をベースとし、状況に応じて非接触型を含めたシステムの構築も可能。12Vバッテリーと太陽光パネルの組合せによる5年間無給電での稼動を実現。5年間の製品保証オプションも用意した。 桜井清仁・計測システム事業部副事業部長兼サービス開発部長は「当社は、国土交通省の革新的河川管理プロジェクト(第1弾)、同(第2弾)に参加した。同省の策定した基準や仕様に沿った危機管理型水位計を展開している。簡易型水位計を合わせて累計5万台以上の販売実績がある。国内メーカーの水位計ではシェアナンバーワンを誇る。応用地質は、40年近く前から水位計を製造している。2000年は携帯電話とPHSの契約数が固定電話サービスの契約数を抜いたが、その頃、当社は国内で先駆けて、センサと通信網を連携したシステム『i―SENSOR』(アイセンサー)を開発した。水位計は、携帯電話網を使ってデータを配信する。携帯電話網と水位計をつないでデータを配信するビジネスを始めたのも応用地質がほぼ初めてだった。危機管理型水位計は、フィールドモニタリングの豊富な実績が実証実験でも証明されている。長年の実績と精度の良い点がポイントだ」と話す。 今後は「管掌は農林水産省だが、『ため池の監視』で危機管理型水位計を設置したい自治体もあると聞く。グループ企業や協力企業と協同での水位計の国際戦略も含めて新しいビジネスとして視野に入れている」という。     ◇ 水位を簡便に計測する冠水センサ「冠すいっち」は、冠水(増水・越水・越流)を検知するセンサ。道路やため池、河川堤防の天端および法面に設置し、管理水位(2~3深度)を設定する。センサ内にはフロートがあって、水位に合わせて中のフロートが上がってくる。危険な水位に達したら即座にクラウドサーバーを経由してアラートを発信し、マップ上で表示される。ため池、河川(用水路)、堤防、アンダーパス、排水溝などへの適用が可能。通信部(LTE―Mモジュール及び電源)とセンサは別になっており、ケーブルで接続する構成となっている。通信部1台にセンサ3台まで接続可能。バッテリにておおよそ5年間稼働できる。 桜井氏は「あらかじめ水位のしきい値を決めて、冠水センサの1段目まで上がったら、クラウド管理上で例えば黄色のマークが出てメールが配信される。2段目まで来たら赤色のマークが出て知らせる。『冠すいっち』は水位計に比べて安価なので、危機管理型水位計を予算的に付けられない自治体も導入しやすく、増水対策に貢献する。先ほどの『ため池の監視』の話だが、ため池には水位計と雨量計と監視カメラの3点セットの備えが理想的といわれているが、カメラがずっと撮影中では、なかなか電源が持たない。そこで『冠すいっち』が水位の上昇を検知して、そのセンサの出力信号をカメラに入力してその時点でカメラが作動してデータを取得することもできる。『冠すいっち』では内水氾濫、小河川用途以外に『ため池の監視』のトリガースイッチとしても提案している」という。     ◇ 内水氾濫を検知する『冠水センサ付きボラード(車止め)』は、ボラード(車止め)に冠水検知機能を搭載。ボラード内にはフロートスイッチが内蔵され、水位に合わせてフロートが上昇する。あらかじめ設定した水位(3~30㌢㍍)に達すると、ボラードが赤い非常灯を発光して通行者などに知らせるほか、自治体関係者や施設管理者にメールで情報を通知する。冠水状況を早期に把握することで、浸水対策や周辺住民の安全な避難などの措置を迅速化できる。 情報の精度(場所・時間)が高く、設定水位に達すると即時に通知されるので、管理者は現場確認(パトロール)や対策の優先順位を検討しやすくなり、結果的に災害対応のリードタイムの確保に繋がる。 応用地質とサンポール(広島県広島市、山根以久子社長)、ユアサ商事(東京都千代田区、田村博之社長)が共同開発した。3月に京都府福知山市内で実証試験を開始した。その後、千葉県浦安市や静岡県などでも実証試験を実施している。 堀越満・情報企画本部ITソリューション企画部グループリーダーは「街中の社会インフラを利用して、都市の災害をモニタリングする発想。3社で共同開発した。サンポールの既存の車止め内部に当社の冠水を検知するセンサ、通信デバイスなどを埋め込んだ。車止めが冠水すると、それをセンサが検知して、その情報を当社のクラウドサーバーに通信する。そこから自治体や施設の管理者などにメールで通知する仕組み。車止めの中に内蔵したLED非常灯が赤く点滅して、道路が冠水している、近づいてはいけないことを周辺住民や運転手に知らせる。冠水をセンサが検知したあとで、道路の監視カメラで状況を確認して、パトロールに行くといったオペレーションも考えられる」と述べた。 監視カメラで24時間モニター監視するよりは、センサのアラートを受けてから、カメラ映像を見て、状況把握した上で現地に行けるため、非常に合理的かつ効率的に管理業務を進められるとユーザーは話しているという。 さらに「自治体側としては、とにかく早く状況を知り、必要な初動対応に早く着手したい。現在は気象予報を利用して警戒を行う自治体もあるが、気象予報よりも早く、ボラードが冠水を検知して初動対応を行ったケースも聞いている。一方で、この製品は車止めなので道路周辺にしか設置できないため、ニーズに合わせて当社の『冠すいっち』の併用も提案している」と話した。 実際、福知山市の事例では、「冠すいっち」と「冠水センサ付きボラード」の両方が設置されている。最初に、水路に設置した冠すいっちが増水を検知して信号を送って一報を知らせる。その後、さらに増水して道路が冠水すると、今度はボラードが反応して知らせる〝2段構え〟になっている箇所もある。 監視するシステムには、ダッシュボード機能(オプション)、GIS機能(同)がある。前者は、利用中のセンサを一元管理することができる。センサの稼動状況を確認したり、過去のデータをダウンロードすることが可能(センサから送信されたデータはクラウドサーバーで管理・保存される)。 後者は、多地点のセンサを、地図上で一元管理できる。センサが冠水を検知した場合には、地図上のアイコンが変化する。直感的に操作できるインターフェースを採用しているため、誰でもすぐに利用を開始できる。 「都市型の内政氾濫はどこで発生するか、どこまで広がっているのか把握することが難しい。そのため、多地点に『冠すいっち』『冠水センサ付きボラード』を設置した場合、メール通知だけでは地域の状況がなかなか掌握しきれない。GIS機能をつかって、一瞥して地域の状況を把握できる仕組みを用意した」(堀越氏)。     ◇ 応用地質グループの最新技術や製品、サービスを展示・紹介するプライベートショー「OYOフェア」。今年はオンライン(入場無料〈事前登録制〉)で「OYOフェア2020 オンラインエキシビション」として10月14日~ 21日に開かれる。「 テーマは「3次元化技術×DX 3次元化技術で加速する社会・産業のデジタルトランスフォーメーション」。地盤のBIM/CIMに欠かせない3次元化技術やクラウド連携の防災IoTセンサ、AIを駆使したインフラメンテナンス技術など、社会のDXを加速させる最新のソリューションを一挙に紹介する。「冠すいっち」や「冠水センサ付きボラード」も紹介する。参加希望者は、所定のフォームから事前登録する。詳細はhttps://www.oyo.co.jp/exhibition-oyo-fair-2020/