東芝デジタルソリューションズ、NICTからQKDシステムなど受注

東芝デジタルソリューションズは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が量子鍵配送(QKD)に関する研究のために運用する量子鍵配送ネットワーク「Tokyo QKD Network」向けに調達する『分散管理型量子鍵配送装置』と『量子・古典ハイブリッド型情報処理装置』を受注し、同社のQKDシステムと量子インスパイアード最適化ソリューション「SQBM+」を納入すると発表した。 NICTではかねてから、「理論上いかなる計算能力を持つ第三者(盗聴者)でも解読できないことが物理法則により保証されている鍵(乱数)共有方式」であるQKDと、QKDの鍵を利用した情報理論的安全な秘匿化を可能とする暗号(量子暗号と定義)の社会実装に向けて研究を行うとともに、複数のQKD装置から構成される試験用量子鍵配送ネットワーク環境である、「Tokyo QKD Network」を運用してきた。このネットワークは2010年より運用を開始した世界で最も長い期間の運用実績を持つQKDネットワークで、これまで企業や大学と協力してさまざまな実験を行うことで、多くの技術が蓄積されてきた。 政府が、量子技術イノベーション戦略(令和2年1月策定)及び量子未来社会ビジョン(令和4年4月策定)に基づき、産学官一体での量子技術の取り組みを推進する中、将来の量子コンピュータ時代の到来に向けてQKD及び量子暗号の社会実装の加速が求められていることから、NICTは「Tokyo QKD Network」を拡張し、官民を問わず多様なユーザーの実証を可能とするテスト環境の構築を進めている。今後、NICTでは量子・古典ハイブリッド型情報処理装置を利用した次世代コンピューティング基盤と、QKD・量子暗号など超長期セキュリティを保証する次世代暗号基盤を融合した量子セキュアクラウドの実用化に向け、「Tokyo QKD Network」環境下で実証研究を推進していく。 今回、同社のQKDシステムを導入することで、多拠点間通信や複数のQKDネットワークの接続といった実用化に向けたネットワーク構築が可能になる。また、医療、新素材、製造、金融分野など官民のユーザーのさまざまな課題に対して、「Tokyo QKD Network」環境下の高い秘匿性を確保した状態で、「SQBM+」を活用してもらい、量子セキュアクラウドの実用化に向けた取り組みを支援する。 東芝グループは、これまで20年以上にわたり量子関連技術の研究開発に取り組んできた。また、「Tokyo QKD Network」においては、これまでもNICTが展開する共同検証や標準化活動に参画してきており、さらに英国での世界初のQKD商用メトロネットワークの提供をはじめ、世界トップクラスの成果と実績を積んできた。今後も、国内のQKDネットワークの構築とその応用に取り組み、さらなる量子関連技術の社会実装と新たな産業の創出に貢献する。