イートラスト、『市町村向けパッケージ』を展開
イートラスト(東京都台東区、酒井龍市社長)は、自社開発の河川監視カメラシステムを多くの自治体に納入している。「eT001s」は、インフラ条件に左右されずに即時に設置可能なクラウド型防災監視カメラシステム。本体制御装置、電源BOX装置、ソーラーパネルで構成。配線不要のため、災害時に通信や電気が遮断されても、遠隔で災害現場の情報を受信できる。さらに各種気象センサーを必要に応じて自由に搭載できる。 特長は次の通り。▽完全ワイヤレスで撮影画像、測定データを取得し、クラウドサーバーへ送信。電源設備等の整っていない場所でも容易に設置・施工ができる▽ユーザーの要望に合わせ、気象センサーや水位センサーなど多様なセンサーを組み合わせたカスタマイズが可能▽星明かり程度の明るさでも現地画像の確認ができる。外部照明との連動も可能。 イートラストは、河川監視カメラシステムを中核とした防災ソリューションを総合的に自治体に提供するクラウド型サービス『市町村向けパッケージ』の展開に注力している。本格運用の第1弾となったのが福岡県久留米市への導入だ。 酒井龍市社長は「6月の梅雨時までに久留米市内4ヵ所に河川監視カメラを設置したいとの要望を受け、『市町村向けパッケージ』を製品化。7月に自治体で初めて『市町村向けパッケージ』を納めた。『令和2年7月豪雨』(7月3日~7月31日)では、久留米市も筑後川支流などで氾濫が発生し浸水被害があったが、事前に稼動でき〝お役に立てた〟。九州地区では、7月の豪雨前で当社の河川監視カメラが200台ほど納入されていたが、これは従来の県単位での導入で市町村単位での導入は初めて」と話した。 『市町村向けパッケージ』には河川防災情報ページの作成が含まれている。そこでは、同社などの河川監視カメラの映像がいつでも誰でも閲覧できる。久留米市の例では、『防災』のページにとんで『ライブカメラ(河川等)』をクリックすると、リンクされているさまざまな河川監視カメラの映像を見ることができる。現在の画像に加えて過去の映像も見られる。ライブカメラを通して、河川の増水状況や水位、周辺の天候状態などの確認ができる。危機管理型水位計が設置されている河川では川の水位情報も見られる。CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)で、人口30万人が一斉にアクセスしてもサーバーがダウンしない仕組みとなっている。 酒井社長は「都道府県単位の河川監視カメラシステムの導入では、国土交通省の基準に準拠した監視カメラを河川事務所などが設置。河川情報センターなどの国交省の一般向けサービスに一般住民がログインしたり、あるいは県が独自でサーバーを構築して、県単位の河川情報システムに映像を送信するのが一般的な仕組みとなっている。ただ、最近は、市町村単位で、独自に河川監視カメラシステムを構築して、さらに映像の公開の仕組みまで含めて提案してほしいという声が増えてきた。多くの市町村が河川監視カメラは導入したいが、それをホームページで公開する仕組みまでは持っていないということだった。そこで、そのニーズに応えて『市町村向けパッケージ』を製品化した。サーバーはオンプレミスでもクラウドでも構わないが、ここでは市町村がサーバーを保有する。今後、『市町村向けパッケージ』を拡販したい考えだ」と述べた。 コスト面でも優位性がある。大手の監視カメラシステムの導入ではカメラが1ヵ所百万円程度、サーバーは1ヵ所千万円単位という。さらにクラウドシステムの構築、配信ネットワーク構築、ホームページの構築まで加わるとかなりの高額になる。『市町村向けパッケージ』は、河川監視カメラシステムの導入にあたって、検討から設定、設置工事、運用及びクラウドなどのネットワーク構築、さらに自治体の防災ホームページの構築・運用まで河川監視カメラシステムに関わるすべてをパッケージ化して提供するので、導入コスト、運用コストが低く抑えられる。 「標準化してよりわかりやすく提供するのが『市町村向けパッケージ』。導入コストは自社開発製品が中心なので非常に廉価で提供できる。規模にもよるが、運用コストは月1万円~2万円程度。カメラのランニング費用は1ヵ所4、5千円と安価。各市町村毎に河川の位置など地図は全く違うが『市町村向けパッケージ』は導入の検討から1日もあれば設定ができてしまうわかりやすいものにした。今後、クラウドの部分をパターン化して確立すればもっと短納期での導入が可能だ。導入コストも、大手では1千万円以上かかるところを、標準化することで、最終的にはかなりの安価で提供できる。クラウドのパッケージ化を行いシステム全体の構成を変更していくことで、さらに安価でなおかつ短納期で提供する予定」(酒井社長)。 イートラストのホームページ構築のノウハウは、イートラストの創業の地、新潟県長岡市の防災ホームページ構築で培われた。長岡市は情報システムのクラウド化を進めており、防災ホームページの構築を同社が請け負った。河川監視カメラや放射線監視システム等、防災に関するすべてを構築している。これをベースにもっとシンプルになおかつ簡単にという考えが『市町村向けパッケージ』に活かされている。今後の提案営業ではハードウエアと〝連携〟しながら、クラウド上に徐々にカスタマイズして、市町村の公式ホームページにおいてライブカメラ映像配信のページを中核に、閲覧した人が探しやすく、地域住民の防災・減災に役立つホームページが構築できるところを強調する。「これがこれからのニーズに沿った提案」と酒井社長は話した。
この記事を書いた記者
最新の投稿
- 実録・戦後放送史2024.09.02連載にあたって
- 筆心2024.09.022024年8月26日(第7712号)
- 放送ルネサンス2024.09.02放送100年特別企画 「放送ルネサンス」第1回
- 放送2023.09.01ビデオリサーチ 災害情報入手経路の7割が地上波民放テレビ