NICT「電波研クラブ」「無線の父」鳥潟右一博士 没後100周年記念講演会
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)等に勤務する無線愛好家のサークル「電波研クラブ」(JF3CGN滝澤修代表)は6月10日、秋田県大館市の大館郷土博物館に協力しTYK式無線電話機などを発明した鳥潟右一(とりかた・ういち)氏の没後100周年を記念する講演会を開催した。 鳥潟氏は1883年、秋田県花岡村(現在の大館市)に生まれ、1906年に逓信省電気試験所(現在のNICT等)に入所、鉱石検波器の発明を皮切りに世界初の実用無線電話とされるTYK式無線電話機の共同開発に尽力した。さらに、海外で開発されたばかりの真空管技術を導入し、同時送受話無線電話、有線・無線電話相互接続、搬送電話などを世界に先駆けて開発・実用化した。 これらの業績から鳥潟氏は我が国の「無線の父」と称されている。しかし、電気試験所の所長として在任中の1923年、40歳という若さで病没した。今年は鳥潟氏の没後100周年にあたる。 今回の記念講演会は情報通信月間行事として、大館郷土博物館が主催し、鳥潟氏の命日である6月5日の直近の土曜日である6月10日、大館市北地区コミュニティセンター(秋田県大館市)で開催された。講演会は対面とオンラインのハイブリッドで開催され、対面では78名、オンラインでは海外を含む36名が聴講した。 最初にNICTの滝澤修上席エキスパートが「鳥潟右一博士の業績と現代」の演題で講演、鳥潟氏の数々の業績を紹介したうえで、鳥潟氏が100年以上前に目指した「着想にとどまらない実用化の重視」「外国の模倣からの脱却」「ICT人材の育成」が、今もなお我が国のICT業界の現在進行形の課題であり続けているという先進性を指摘した。 続いて電波研クラブのメンバーで、TYK式無線電話機を製造したアンリツ株式会社に勤務する金澤紀応氏が「世界に学び世界に先駆けて実用化されたTYK式無線電話機」の演題で講演し、同装置の技術的な先進性について、実演を交えてわかりやすく説明した。 熱が入った講演に対して、会場とオンラインの両方から多くの質問が出て、予定されていた時間を大幅に超過して、午後4時に終了した。 2023年は現在の大館市で生まれた忠犬ハチ公の生誕100周年にもあたっており、大館市にゆかりのある2つの100周年の連携は多くの市民の注目を集めた。 なお、本講演の模様は大館市のユーチューブチャンネルで公開され、誰でも視聴できるようになる予定だという。
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