KDDI、ダイナミック周波数共用で2・3GHz帯を運用

KDDIと沖縄セルラーは7月3日、5Gの快適な通信環境の提供とエリア展開加速を目的に、新たな5G周波数である2・3GHz帯の運用を開始したと発表した。2026年度末までに全国で8300局超の基地局を設置する予定。 両社は、1つの周波数帯を複数の事業者(免許人)が場所や時間帯などによって使い分けるダイナミック周波数共用の運用を実現した。電波有効利用促進センター(電波法第102条の17)に指定されている電波産業会(ARIB)が運用する「ダイナミック周波数共用システム」を利用し、携帯電話システムと他システムが周波数共用することは国内で初めて。これにより放送事業者が中継映像の伝送などに使用している2・3GHz帯の5G利用を可能とした。 両社はこれまで、高品質かつ強靭なネットワークの構築を目指し、700/800MHz帯からSub6(3・7/4・0GHz帯)やミリ波(28GHz帯)までの複数の周波数帯を組み合わせ、各周波数の特性や帯域幅などを踏まえたエリア設計や基地局展開を実施してきた。 今回、基地局の電波発射と停止を柔軟に制御する自動制御システムを開発・導入し、40MHzの帯域幅かつ優れた電波伝搬特性を持つ2・3GHz帯の運用を開始することで、より快適な5G通信環境の実現を目指す。 5G浸透による通信量増加への対応や迅速なエリア展開に向けて、携帯電話事業者は電波の周波数帯域を確保することが重要となっている。一方で、電波は携帯電話以外にも、さまざまな用途で利用されており、各事業者が利用できる周波数帯域は限られている。 2・3GHz帯は、放送事業者がスポーツイベントなどの取材現場から映像・音声を伝送する際に利用されている。利用される時間や場所が常に一定ではないため、さらなる電波の有効活用の観点から、2・3GHz帯をより柔軟に共用する手法が議論されてきた。 KDDIとKDDI総合研究所は、2019年からダイナミック周波数共用の技術開発を行い、放送事業者と携帯電話事業者による2・3GHz帯の効率的な共用が実現可能なことを確認した。その後、KDDIと沖縄セルラーは2022年5月に総務省から2・3GHz帯の割り当てを受けた。 ダイナミック周波数共用の取り組みは次の通り。 ①ダイナミック周波数共用=優先して2・3GHz帯を利用できる一次利用者の放送事業者が、電波を利用する時間や場所などの情報をデータベースに登録する。登録されたデータベースを基に、ダイナミック周波数共用の判定システムが地理的条件などを踏まえて電波干渉の有無を自動で計算し、二次利用者(一次利用者に干渉を与えない場合に周波数を利用できる免許人)であるKDDIと沖縄セルラーが基地局からの電波発射・停止を制御する。従来の共用では、利用する時間や場所を事前に決めて運用する必要があったため、双方の事業者が電波を利用していない時間や場所があるなど電波の有効活用に課題があった。ダイナミック周波数共用では複数の免許人が利用する時間と場所を全体管理することで、同じ周波数帯の電波を柔軟かつ効率的に共用することを可能とした。(全文は8月4日付け2面に掲載)