NICT、SAPとICT分野における機械翻訳で提携
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、徳田英幸理事長)は、独SAPと、互いの自動翻訳のリソースや技術を持ち寄り、企業の業務効率化ソフトウエア専用のAI翻訳システムの高精度化・多言語化を進め、国内外企業の業務効率化に役立つ翻訳サービスを開発していくことになったと発表した。 経済のグローバル化の急進やテクノロジーの急速な革新により、ビジネス向けソフトウエアの関連情報の多言語化ニーズが急増している。ソフトウエアの開発者や利用者が高精度の機械翻訳により、ソフトウエアに関する最新情報を正確に効率的に入手することが、これまで以上に求められている。 NICTは、観光や生活に特化した音声翻訳、特許や製薬に特化したテキスト翻訳で高精度な『AI翻訳』を実現してきた。また、高精度な翻訳を目指す手段として、対訳データを集める『翻訳バンク』を運用し、大規模に蓄積してきた。 一方、SAPは、あらゆる業種とあらゆる規模の企業向けにビジネスアプリケーションを提供、世界180ヵ国以上に約43万7000社の顧客を擁し、約80言語を対象に、高精度、高速な翻訳サービスの提供を念頭に研究開発を推進してきた。 このような状況を背景に、NICTとSAPは、互いの自動翻訳のリソースや技術を持ち寄り、2022年末までの期間、共同で研究を実施することになったもの。 AI翻訳とは、AI技術で多用される深い階層構造を持つニューラルネットワークを用いた自動翻訳技術のこと。NICTは、AI翻訳の研究開発を推進しており、自動翻訳に関する論文数のランキング(2010年度~2018年度第1四半期のScopus)で、世界2位と7位をNICTの研究員が占めるなど、研究水準の高さは客観的に評価されており、自動翻訳技術で世界をリードしている。 その研究成果である高精度自動翻訳システムをTexTra(テキストラ)と名付けて公開している。公開サイト「みんなの自動翻訳@TexTra」では、コピー・ペーストしたり、サイト上の翻訳エディタを利用したり、WordやPowerPointのファイルを直接翻訳するなど、様々な方法で翻訳精度を試すことができる。 翻訳バンクとは、AI翻訳の精度向上には、アルゴリズムの改良に加えて、対訳データの質と量の影響も大きく、高品質な対訳データの大量確保が重要となることから、NICTは、総務省と共に、対訳データを集積する「翻訳バンク」を運用し、日本語の翻訳技術の多分野化・高精度化に取り組んでいる。
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