NICT、透明ARディスプレイにフォトリアルな3D表示を実現

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、徳田英幸理事長)デジタル光学基盤研究室は、 ホログラムプリント技術(HOPTEC)を応用し、多人数が同時に3Dメガネなし(裸眼)でフォトリアルな3D表示を体験できる透明AR(Augmented Reality)ディスプレイシステムを開発したと発表した。同システムは、NICTが独自開発したホログラフィックフィルム1枚と、複数台の小型プロジェクタから構成される。さらに、NICTと凸版印刷は、同システムに、凸版印刷の保有するライトステージを用いて計測した高精度な顔計測データから成る映像を3D表示することに成功した。今後、フォトリアルな3D表示を通じ、透明ARディスプレイシステムを使ったオンラインによるコミュニケーションや遠隔作業支援などに活用する。   今回、NICTはホログラフィックフィルムを応用した透明ARディスプレイシステムを開発した。凸版印刷は顔計測データの取得、及び人体情報データの活用に関する研究/用途開発を行った。 昨今、オンラインでのコミュニケーションの重要性が高まる中、二次元映像のみでは情報量が足りないケースが多く、コミュニケーションツールとして、フォトリアルな3D表示への期待が高まっている。 NICTでは、HOPTECを使って作製したホログラフィックフィルムとプロジェクタを組み合わせることで、映像を3D表示することが可能な透明ARディスプレイの研究開発を行ってきた。凸版印刷では、高精度の人体計測が可能な装置「ライトステージ」を核に、顔計測データを始めとした人体の様々な情報を適切に加工し提供するプラットフォームの構築を目指し、トッパンバーチャルヒューマンラボを開設して、事業開発を行ってきた。 今回NICTは、ホログラフィックフィルムと複数台の安価な小型プロジェクタのみの簡易な構成により、裸眼で3D表示を体験できる透明ARディスプレイシステムを開発した。このシステムは、約30台の小型プロジェクタを用いてフルカラーの映像を投影し、対角35㌢㍍、水平視野角60度、垂直視野角10度以内で、3Dメガネを着用せずに多人数で見ることが可能。なお、光線制御技術に関しては、 京都橘大学が協力した。 また、NICTと凸版印刷は同システムによる新しいコミュニケーションの可能性を探るべく、凸版印刷のライトステージで撮影した高精細かつ肌の質感を含んだ顔計測データを同システム上に再現する実証実験を行い、自然な顔の表情を映し出すことに成功した。 NICTと凸版印刷は、今後も3Dコンテンツを使用した新しいコミュニケーションの可能性を開拓すべく協力していく。また、これまで培ってきた知見と技術を活かし、仮想空間と実空間をつなげるデジタルツインや、仮想キャラクターといったエンターテイメント分野だけでなく、人体を3D表示させた手術トレーニングや手術支援など医療分野における活用など様々な分野への適用を進めていく。 NICTは、3Dコンテンツの更なる高精細化、システムの簡素化・柔軟性の向上、各種3Dデータへの対応(例えば、CADデータや BIMデータ、 点群データ等)などを進め、コミュニケーションにとどまらずそれ以外の分野(例えば、建設分野、教育分野など)へ寄与できる技術の開発を目指す。 凸版印刷は、人体に関する各種計測データを蓄積し、高セキュリティ下での管理・運用ノウハウと知見を活かし、様々な領域に適応可能なデジタルコンテンツ生成のプラットフォーム構築を目指す。