日本ケーブルラボ、YRPで地域BWAとLPWA連携ケーブルアプリ実証

 一般社団法人日本ケーブルラボ(東京都中央区、田﨑健治理事長)、YRP研究開発推進協会、愛媛CATVは、3月28日に横須賀リサーチパーク(YRP)センター1番館ホール(神奈川県横須賀市)で、ラボ特別ワークショップ「地域BWAとLPWA連携によるケーブルアプリ実証」を開催した。 3者共同でYRP内の施設を利用し、カバーエリアの小さい「LoRa」とカバーエリアの大きい地域BWAの組み合わせによる実証。GPSを利用した地域の見守り、農業センシング等を目的とした実証実験の結果などを発表した。あわせて、LoRAのエリア設計に必要なデータの抽出と課題抽出を行った。 特別ワークショップではまず、YRP研究開発推進協会と日本ケーブルラボによる相互協力に関する覚書(MOU)締結の署名式を行った。松本修一・日本ケーブルラボ専務理事、甕昭男・YRP研究開発推進協会会長が登壇し覚書に署名した。。甕氏は「YRPは無線関係の研究開発施設である。ケーブルテレビの無線利活用での実証連携で日本ケーブルラボ様とのMOU締結を大変うれしく思う」と述べた。松本氏は「日本ケーブルラボは過去にケーブルWi―Fiの実証をYRPで行った。その後、Wi―SUN、第2世代STBの相互接続などで連携した。YRP様がハイブリッドLPWAテストベッドでいろいろ進められているので、それでは私どものLPWAのアプリケーションツールを使って連携してアプリ実証をしようということになった」と述べた。 「地域BWAの現状と5Gについて」と題して一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟無線利活用委員会の田村欣也委員長が講演した。「無線関連の取り組みにおいて、地域BWA導入推進と本格的な普及は最重要項目である。あらためて、地域BWAサービス先行局の営業やプロモーションの成功事例の共有を進め、業界全体での地域BWA普及活動も強化する」と述べた。次に総務省情報通信審議会ローカル5G検討作業班の報告案を紹介した。日本ケーブルテレビ連盟やケーブルテレビ事業者が参加した「MWC19 Barcelona」(毎年スペインで開催される世界最大級のモバイル国際見本市)視察ツアーの報告を行った。まとめとして「無線が主役になる時代には、有線を保有している事業者にビジネスチャンスが巡ってくると思う。そのビジネスチャンスを掴み取るために業界が一丸となって、最善を尽くし、必ずそのチャンスを掴み取る。そのためにも、地域BWAを推進し、5G時代の主役の一員となるべく、皆さんとともに進んでいきたいと思う」と述べた。 続いて「横須賀リサーチパーク(YRP)の概要を甕会長が説明した。「YRPの優位性、強みはモバイル・IoT・ICT分野の最先端の技術と人材であり、地理、事業環境、自然気候などにおいても優れている点がある。地形が電波の実証に適している。GSM、3G、LTE、エリア放送、ITSなどの実験の実績がある。無線通信システムの研究開発試験に適した地理環境だ」と話した。 YRP研究開発推進協会WSN協議会事務局の柘植晃氏が「YRPにおけるハイブリッドLPWAテストベッドを紹介した。同テストベッドのポイントは①同時に3種類のLPWA(Sigfox、LoRa、Wi―SUN)の実証実験が可能なテストベッドを構築②低コストかつ短期間のLPWA実証実験により、スピーディーなIoT事業のサービス開発をサポート▽横須賀市の変化に富んだ地形や環境を活かし、さまざまなアプリケーションの実用的なLPWA実証実験が可能。例えば、企業は自ら実証環境を構築することなくコストと時間をかけずに、IoT事業に適したLPWAを選択することが可能となり、IoT事業のサービス展開の加速が期待される―などと話した。横須賀市役所とYRPセンター1番館の屋上に、Sigfox、LoRa、Wi―SUNの3方式の基地局を設置し、市内の複数箇所にハイブリッドLPWA基地局を設置。擬似センサーデバイスから同一環境、同一条件でデータを集め、地形や気象条件等による通信特性の変化、通信品質への影響などを確認できる―とした。LPWAテストベッドを活用した実験の取り組みで今回の『ケーブルテレビ連携 IoTサービス実験』では『地域BWA実験局をYRPに一時的に設置し、LPWAによるセンサーデータと連携した地域サービスアプリの実証実験を実施』であり、BWAはLPWAのセンサーデータ(GPS情報)の中継網として利用。データはクラウドにあげる。 続いて「YRPテストベッドにおけるLPWAと地域BWA連携によるケーブルアプリ実証実験報告」を日本ケーブルラボの伊藤直人事業調査部部長が行った。「愛媛CATV、YRP研究開発推進協会、日本ケーブルラボの役割を説明すると、愛媛CATVは地域BWA基地局/端末、地域BWAコアネットワークを、YRP研究開発推進協会はテストベッドと実験局免許申請を、ラボはloRa基地局/端末、センサーアプリケーション、実証実験を行う。ラボは地域BWA網を中継網としたケーブルIoTプラットフォームを提案する。具体的には、タブレットと組み合わせた見守りサービス、LoRaを用いたケーブルIoT『スターターキット』の貸し出しを実施する。 このあと、GPSトラッカー及び土壌、大気センサーのリアルタイムデモンストレーションを行った。見守りサービスデモ(通学途中の子どもや老人の見守りに活用。GPSトラッカーを用いて、現在の居場所を画面上に表示)、温度センサーデモ(ビニールハウス内の温湿度モニタリング。人為的に急速に冷却して温度を下がるのを観測した)、土壌センサーデモ(遠隔での土壌や気温の監視。お湯による急速な温度上昇を観測)。デバイスとして用いているのはLoRa端末をはじめ温湿度・土壌センサー、GPSトラッカーなどである。 次に参加者はグループに分かれてYRP施設の見学会を行った。『ケーブルテレビ連携 IoTサービス実験』で運用する、2月19日に設置されたYRPセンター1番館屋上にある地域BWA実験局(地上約70㍍。愛媛CATVの工事部隊が設置。地域BWAコアと無線基地局間をVPNで接続)、3月19日に設置された日本ケーブルラボのLoRa実験局を見学した。なお、この「ハイブリッドLPWA基地局」にはLoRa(さくらインターネット)のほかSigfox(京セラコミュニケーションシステム)基地局もある。ソニーの「ELTRES」基地局も近くに置かれている。 続いてYRPセンター1番館入り口付近の植え込みにある温湿度・土壌センサーを見学した。電源、LoRa端末は屋外用収納プラスチックボックス内に収容。気温湿度計はボックス内。土壌センサーはボックス横の土壌に差し込まれている。このほかGPSトラッカーが道路に埋め込まれている。 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)からは5Gにおける自営マイクロセル展開、ワイヤレスグリッドに関するNICTの取り組み、スマートオフィスなどでプレゼンテーションが行われた。