富士通、AIを活用して海中 生物や構造物の3次元形状データを取得

富士通は、海洋の状態をデジタル空間に高精度に再現し、海洋を構成する環境の変化や海洋を活用した施策の効果などのシミュレーションによる予測を可能にする海洋デジタルツインの研究開発の一環で、AIを活用し、自律型無人潜水機(AUV)を用いて海中の生物や構造物の解像度が高い3次元形状データを取得する技術を開発した。
同技術は、AIを活用して画像を鮮明化することで、濁った海中でも対象物を識別し形状を計測できる画像鮮明化AI技術と、波や潮流の中でも自律型無人潜水機からの安定計測を可能にするリアルタイム計測技術から成る。同技術により、カーボンニュートラルや生物多様性の保全に向けた海洋調査に際して、対象となる生物や構造物の状況を可視化し、体積などを推定することが可能になった。これらの技術に関して、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所とともに、沖縄県石垣島近海において実証実験を行い、サンゴ礁の精密な3次元形状データを取得することに成功し、技術の有効性を確認した。
富士通は今後、今回確立した技術の測定対象を、ブルーカーボンの吸収量が多い海藻などに拡大することを目指し、2026年度中に藻場に関する海洋デジタルツインの確立を目指す。これにより、企業・自治体などによる、藻場が吸蔵する炭素の見積りや藻場の保全・造成をする施策、サンゴ礁における生物多様性を保全する施策などの立案を支援し、サステナビリティ・トランスフォーメーションを推進する。

(全文は3月29日付け2面に掲載)

この記事を書いた記者

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田畑広実
元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。