【CATV特集】伊藤忠ケーブルシステム 中谷社長に聞く

伊藤忠ケーブルシステムは、1986年に設立され、ケーブルテレビからCS/BS放送、地上波、ポストプロダクションと幅広い分野へ製品・サービス・サポートを提供している。 国内外の幅広い製品と培った技術を組み合わせるシステムインテグレーターとして、映像、通信、音響分野で常に顧客の期待を超えるソリューションを提供、多様なニーズに応えている。 2020年6月に社長に就任した中谷晃治氏に、新型コロナウイルス感染症の影響や2023年の戦略、新製品・新サービスの展開、今年の抱負などを聞いた。  ――2022年を振りかえっていただいてどのような年でしたか 中谷 全般的には、コロナ禍からゆるやかに回復することを期待していたのですが、円安やロシアのウクライナ侵攻など不透明感が強まり、思ったほど需要の高まりがありませんでした。特に放送局関連でそれが顕著でした。我々の取扱製品は海外からの輸入が多いので、特に円安にも大きな影響を受けました。さらに半導体不足による製品の納期が不安定になるなど、厳しい情勢が続いており、これに関してはまだ完全には終わっていません。 そのような中、少しずつですが、海外も含めて展示会がリアルで開催され、日本でもInter BEEなどへ出展し、多くの方々と直接お会いできる機会を持てたことは前向きな動きかなと思います。 一方、ケーブル局関連では、FTTHの導入はひと段落しましたが、ケーブル局はインターネットの高速化に取り組んでおり、10G化へ向けて本格的な動きが出始めたと感じています。また、FTTHに関しては集合住宅が次のビジネスになりますが、集合住宅向けのソリューションとしてモデム(HCNA)を販売しており、こちらは堅調に推移しています。 また、動画配信やOTT分野では、こちらも最初の段階の投資はひと段落しましたが、今後、更新や拡大の需要が出てくるとみています。弊社の取り扱い製品のBitmovin社のエンコードサービスがありますが、これに関しては動画配信やOTT向けに堅調に推移しました。 この他、マンション向けインターネット接続サービスも手掛けていますが、これまでは回線については大手から借りて提供していました。新たに自営の回線を一部立ち上げて提供を開始し、サービス向上に努めています。さらに、オフィス向けにLAN設備などネットワークの構築も行っています。マンションのビジネスで培ったノウハウを活用して、オフィス分野にも展開を進めています。 ――昨年はワールドカップが開催され、大きな注目を集めました 中谷 サッカーだけでなく、ボクシングなどでも世界戦をネット配信事業者が独占中継するなどの動きが出てきています。 今回ワールドカップをABEMAが放送したことにより、これまでABEMAや動画配信に触れてこなかった人たちが、テレビにインターネットをつなぐことにより様々なものを視聴できることが広く周知されました。これは非常に大きいことです。 そういう意味では動画配信の認知度が向上した年といえると思います。これから新しい動画配信の会社が出てくることはないですが、システムの拡張であるとか更新などの需要を確実に取っていきたいと思っています。 ――2023年に期待・注目される製品・ソリューションにはどのようなものがありますか 中谷 放送局向けではXenData社のコンテンツ管理ソフトウェア「XenData MAM」があります。アーカイブに特化したソフトウェアで、アーカイブとリトリーブを直感的な操作で簡単に行うことができます。従来のXenData社製品は日本語表示に対応しておらず、多少の慣れを必要とする部分もあったのですが、XenData社の協力のもと日本のマーケット向けに新たにソフトウェアを開発し、操作画面の日本語化に加え、①メタデータの追加と検索 ②プロキシ画像のプレビュー といった機能を強化したことで、より使い易い製品となりました。先頃のInter BEEでも展示させていただき、数多くの来場者様に興味を持っていただきました。 ケーブル局向けでは、AI搭載蓄電池「SMART STAR」を展開していきます。ケーブル局と連携して、ケーブルテレビ加入者の方、特に地方ですでに太陽光発電システムを導入されている方向けに、蓄電システムと組み合わせることにより、日中に発電した電気を蓄電池に蓄えて、朝夕に有効活用したり、深夜の安い電気を系統から蓄電池に貯めて使用することで電気の効率的な運用が可能になることをアピールします。先ほどお話したXenData MAMとSMART STARは将来の主力製品となるよう注力していきます。 マンションインターネットに関しては、自営の回線を有したことにより、“回線の品質“にこだわった10Gサービスを展開していき、加えてマンションなどの管理会社向けのサービスとして、管理者が不在でもリモートでサポートできるという、管理会社向けのDX化ソリューションも展開して行きたいと思っています。 ――最後に今後の抱負をお願いします 中谷 放送関連ですと、番組の制作方法が大きく変化、多様化すると思っています。Inter BEEでも多数の企業が出展していましたが、バーチャルプロダクションが広がっていくのではと見ています。このバーチャルシステムの周辺で必要な商材を展開していきたいと考えています。ケーブル局向けでは先ほどお話しした蓄電池と10Gなど高速インターネットへ対応していきます。動画配信やOTT向けは、認知度が向上しさらに拡大していくと思われますので、Bitmovinなどとのパートナーシップをベースに、事業者の品質向上に貢献していきたいと考えています。 インターネットに関しては繰り返しになりますが、独自回線を持ったことで、品質を追求していきます。すでに接続できるだけでは意味がなく、少しでも遅くなるとか、ましてや途切れたりするとすぐに苦情がくるようになっています。途切れることなく、ある程度のスピードが出ることの保証まではできませんが、加入者の方に満足できるような品質にこだわったサービス展開に注力していきたいと思っています。