放送記念日号 特別対談 児玉圭司理事・技師長×麻生舞本社社長

2023年度、3か年経営計画(2021―2023年度)の最終年度を迎えるNHK。スリムで強靭な「新しいNHK」を目指し、様々な改革を進めている。今後も2023年10月より受信料の値下げを実施。また、衛星放送は2024年3月末で2Kのうち1波を停波するなど、公共メディアの実現のため改革を加速させていく。 技術面でも、新型コロナなどによる社会状況の変化も相まって、リモートプロダクションの展開を進めるとともに、新放送センターに向けて様々な新技術も積極的に取り入れようとしている。 今回の放送記念日対談では、児玉圭司理事・技師長に経営計画最終年度における技術面での取り組み、IP化とリモートプロダクション、新放送センター建設、地上放送高度化、今後の技術部門の研究開発の方向性などについて、本社社長、麻生舞が聞いた。                                ◇ ――経営計画最終年度における技術面での主な取り組みについて教えてください 児玉 2023年度は、3か年経営計画(2021―2023年度)の最終年度となります。1月に経営計画の修正を公表しましたが、受信料の一割値下げや、BSの1チャンネル削減といった大きな施策を実行すると同時に、「安心・安全を支える」情報発信の強化や「あまねく伝える」ための地域を重点とした投資の強化も進める方針です。設備投資の観点では、重点項目の実現・具現化を図る一方で、資産量を削減しコンテンツ制作に資源を集中できるコスト構造となるよう、メリハリのある整備を進めていきます。 技術進展に伴うコンテンツ制作手法の高度化を実現していくため、設備のIP化を段階的に進めます。拠点放送局テレビスタジオのオールIP化整備を皮切りに、本格的なリモートプロダクションやリソース共有といった、新しい制作手法に対応できる設備環境の整備を計画的に進める考えです。また、IP技術ならではのネットワーク管理や機器間の互換性確保など、ノウハウやスキルの蓄積、人材育成も進めていきます。さらに、AIを活用したコンテンツ制作の効率化や充実につながる技術の導入も、引き続き積極的に進めます。 いかなる災害時でも確実に情報発信ができる拠点として、現在建築中の新放送センター「情報棟」の整備をスケジュール通りに進めていくほか、老朽化した地域放送会館の計画的な建て替えも進めます。地域情報の発信基地となる会館は、各地域の特性や実情に合わせた機能を確保し、環境にもやさしい建物としていきます。 「あまねく伝える」を維持するため、地上放送のデジタル化の際に整備し、老朽化が進む放送網設備については、障害実績を踏まえつつ対象を厳選しながら、更新もしくは補修を進めます。あわせて、NHKプラスなどデジタル発信の拡充に必要な設備整備にも投資して、あらゆる伝送路を通じ、視聴者のみなさまに情報をお届けできるよう注力します。 世界的な半導体不足の影響が長期化しており、2022年度も放送関連設備の整備においては、一部の整備計画で変更や見直しが発生しています。公共メディアとして、正確な情報を、いつ・いかなる時でも確実にお届けできるよう、技術面でサービスをしっかりと支えていく考えです。(全文は3月22日号に掲載)