【防災ソリューション特集】 イートラスト 水位計をリニューアル

イートラスト(東京都台東区、酒井龍市社長)は、国交省危機管理型水位計規格準拠のクラウド型水位観測システムである危機管理型水位計「eWL001A」を展開している。主な特長は低価格で電源不要。簡単に設置でき、かつ高精度でメンテナンスフリーなところ。このほか、小型軽量で、水位を測るだけの機能ではなくクラウドサーバーに直接通信ができるLTEの通信装置をすべて内蔵しているので、オールインワンで動かすことができる。このほど、信頼性を高めたモデルチェンジを行った。具体的な改良点について、ソリューション開発事業本部開発部開発課担当課長の立川隆氏、ソリューション開発事業本部開発部開発課の正木輔氏に話を聞いた。併せて酒井龍市社長に今年の抱負を聞いた。――危機管理型水位計の開発の背景についてお聞かせください 立川「2016年に国土交通省水管理・国土保全局が実施する『革新的河川管理プロジェクト』第一弾の実用化に向けた、オープン・イノベーション参画に関する公募が行われました。そのテーマのひとつにクラウド型・メンテナンスフリー水位計(洪水時に特化した低コストな水位計)があって、当社は2017年に電波式の危機管理型水位計を開発しました。具体的な特長は①最新の無線技術を採用=独自開発の計測データ処理手法(ADVANCED FMCW)により、従来の24GHz帯でも高精度な水位測定が可能②優れた保守性と発展性=完全メンテナンスフリーの非接触型水位計、さらに大容量バッテリーと組み合わせることで自律型水位計を実現している。③容易な設置と運用の確実性=水位計本体は従来品に比べ小型軽量のため、橋梁など様々な場所に容易に設置できる。またソーラーパネル、バッテリーを別体とした電源部は、日照を考慮した最適な場所に設置することが可能で、確実な運用を実現する―などです」 ――急速に立ち上がった危機管理型水位計市場は新規参入社も多く、品質面で課題が挙げられていたということですが 立川「危機管理型水位計は5分に一回計測します。1日では288回計測します。その中で測定不能というデータが送られるのならまだいいのですが、間違えた数字を出してしまう、誤検知してアラートが飛んでしまうとお客様に多大な影響を与えてしまいます。誤検知してしまう機種が多く大きな課題となっていました。もともと水位計には非接触型の電波式水位計、超音波式水位計と、接触型の水圧式水位計などがあります。水圧式水位計は、圧力センサーを川の中に入れるタイプで、受圧面や通水孔に動圧(水圧のムラ)を受けると正確な値を計測できません。センサー自身や付着物が、水流の邪魔をして誤差につながるおそれもあります。ケーブル工事が必要で設置の手間がいります。一方、超音波式水位計は、液面上に多量の波立ちや気泡があると超音波が減衰し反射率が変化してしまい、十分な受信感度を得られない場合があります。当社の危機管理型水位計はレーダーを使った電波式水位計です。電波式の利点は、電磁波の波長の特性により、大気分子や気象粒子による吸収・減衰が少ないことです。そのため、雨風や水蒸気、気温、気圧などの気象条件に影響されることなく水位の観測ができます」。 ――今回の改良点をお聞かせください 立川「当社では、万が一誤検知が起こるのを防ぐため、納入後の保守メンテナンスでトラブルを防ぐ努力をしてきました。河床(流水に接する川底の部分)が乾いたり草が伸びたりの影響で測定不可能であれば確実に測定不能を出す、測れている時は正しい数値を出す点に注力して、現地での長期間にわたるフィールド試験に取り組んできました。ただ、絶対に大丈夫といえるまで到達することは難しい側面がありました。そこで今回、信頼性向上を主眼に置いてモデルチェンジをしました。具体的には部品のレーダーモジュールを切り替えました。信号処理の部分を改良しました。何度もフィールド試験を行い、自信を持って提案できる製品となりました」 正木「もともと水位を測る精度は高いので性能アップというよりは、今回は信頼性アップを実現しました。レーダー反射においても、河床が乾いてしまったり、草が大量に生えてくるといった部分は自然を相手にしているので、それによって反射のレベルが変わってきたりします。今回はそこを考慮して、これは測れている、測れていないという判断処理機能を向上させて、万が一測れていない場合は誤った数値を出すよりは測定不能となるようにしました」 ――さらにアピールポイントをお願いします 立川「同業他社の危機管理型水位計には電力消費を抑えるためバッテリーを小さくして、水位が上がった時だけ稼働する仕様のものがあります。当社の水位計はソーラーパネルとバッテリーだけで24時間365日ずっと連続で動かせる前提で設計しています。さらにしっかりと5年以上お使いいただける誂えにしています。それから河川監視カメラとの画像連携も当社の水位計の特長です。当社の防災クラウドカメラ『eT001s』と組み合わせて、画像と数値の両方から水位の変化をとらえることができます。カメラとの連動で川の様子は一目瞭然。さらにデータで細かく分析ができます」 ――クラウド型防災監視カメラシステムeT001s」の今後の市場戦略をお聞かせください 酒井「『eT―Cloud』に『タイムラプス動画機能』(1枚ずつ撮影された写真をつなぎ合わせて、コマ送り動画にする手法)が搭載されました。当社の提供している簡易型河川監視カメラは主に5分刻みもしくは10分刻みの静止画像を取り込んで閲覧できるようになっていますが、それらを合成してタイムラプスを構成して、料金は従来のまま提供しています。今後も河川監視だけでなく火山監視、道路監視とさまざまな分野に裾野を広げてニーズに応えていきたいと思います。おかげさまで当社のクラウド型防災監視カメラシステムは市場シェア50%超となりました。クラウド型防災監視カメラシステムの市場は、都道府県単位の導入から市町村単位へシフトしています。AIの活用であったり防災のクラウド化が市場で広がっています。行政DX・自治体DXという言葉も知られるようになりました。営業戦略をさらに改革して、市町村向けに特化した営業スタイルを確立していきたいと思います。さらに次のステップとして今年は国単位にもターゲットを広げていきたいと考えています」 ――今年の抱負をお話しください 酒井「これまで以上に防災分野におけるクラウドシステムの普及に取り組んでいきます。イートラストは、防災系クラウドの第一人者でありたい。そこにより集中していきたいと思っています」