ATENジャパン新年インタビュー 鄧 鴻群社長に聞く
ATENは1979年の設立以来、接続・共有技術におけるコネクティビティ及び管理ソリューションを専門に製品開発・製造・販売を行ってきた。現在では北米、欧州、アジア各国に拠点を増やし、KVM スイッチ市場において世界的なリーディングカンパニーとなっている。 ATENの日本法人である「ATENジャパン」は2004年に設立され、特に映像関連では先端を走る日本のニーズや要望をくみ取り、本社にフィードバックすることで、機能や性能の向上に寄与している。また、グループ内で初めてショールームを開設した他、各地に営業所などを開設するなど、積極的な事業展開を進めている。 社長の鄧 鴻群氏は、就任以来、毎年二桁成長を続けてきた。2020年こそ新型コロナウイルス感染症の影響で計画に達しなかったが、2021年には再び2桁成長となり、2022年は過去最高の売上高と利益を達成した。鄧社長に、2022年を振り返ってもらうとともに、今後の成長戦略今年の抱負などについて聞いた。 ――2022年を振り返っていただきどんな一年でしたか? 鄧社長 2022年は展示会に積極的に出展しました。内覧会を合わせると合計20の展示会に出展しました。ブランド力を高めると同時に、新製品の詳細や効果的な使用方法などを直接お客様に紹介したいという考えからです。ATENは毎年多数の新製品をリリースするため、製品紹介の場として積極的に活用しています。 また、映像関係だけに限らず、幅広く様々な業界展に出展しました。製造業向けの他、働き方改革やスマート工場、鉄道に加え、SEMICON Japan等に出展しました。ATEN製品はシステムの遠隔操作や監視を可能とし、半導体メーカーや製造装置メーカーに一番適したソリューションです。昨年はJIMTOF(日本国際工作機械見本市)の出展時に、我々の予想以上に製造業にニーズがあると感じました。 また、東京だけでなく地方の展示会にも多数出展しました。ATENは東京以外にも大阪、九州、名古屋の拠点にショールームを設置しており、展示会後はショールームで実機をご覧頂くことが可能です。 ――ビジネス的にはいかがでしたか、また新型コロナウイルスの影響はいかがでしょうか 鄧社長 リモートワーク関連の製品が好調で、業績に牽引しました。特に半導体向けが好調であり、お陰様で2022年度は日本法人として過去最高益を達成することができました。 また、我々はソリューションビジネスへの転換を推進しておりますが、これが奏功し、2022年度ソリューション販売は全体の半数を超え60%近くまで大きく成長することが出来ました。 さらに、2021年4月から本格的にスタートしたキッティングサービスも非常に好評で、お客様や代理店さんから問い合わせや技術的な質問を受けることが多数あり、当社の装置の設置や調整、設定などを我々が直接行うことにより、問題解決もスムーズに行うことができます。 ATENジャパンに就任して以来、毎年二桁成長を達成することができ、2020年はコロナの影響で二桁成長には至りませんでしたが、2021年には再び二桁成長となり、2022年も前年比約30%増を実現しました。 各海外拠点は現地のニーズを本社へフィードバックすることで、新製品開発の機能改善に繋がります。 ――半導体など部品不足の影響はいかがですか 鄧社長 2022年夏までは厳しい状況が続いていましたが、後半はかなり解消されました。可能な限り前倒しで部品調達を行いましたが、それでも一部ICは慢性的に不足していた為、価格が高騰し、数十倍に値上されたケースもあります。製品供給を絶やさないために、あらゆる手段を使ってなんとか調達しました。高騰した価格はすべてを製品に転嫁できないので、一部は我々吸収しカバーしました。 ――今後の戦略についていかがお考えですか、特に開拓していく業界・業種などはありますか 鄧社長 現在各産業で人材不足が深刻化しており、業務の効率化が急務です。この中で特に医療関連に注目しています。最近、遠隔医療が普及しつつありますが、これに加え、KVMを駆使することにより、作業効率を大幅に向上することができます。 ――販売面では、ECサイトにずっと注力されてきましたが、今年の状況はいかがですか 鄧社長 EC販売は現在少し落ち着いた状況にあります。ECサイトではどうしても価格競争に陥ってしまいがちですが、ドロワーやKVMスイッチのハイエンドの定番製品をお買い求め頂くことも多く、高機能かつリーズナブルな価格設定が認知されている為だと考えます。 ――今後注目の新製品としてはなにがありますか 鄧社長 今後はプロオーディオ分野にも展開を予定しております。業務用途向けに様々な場面で活用できるシーリングスピーカーの他、アンプもラインナップで取り揃えており、弊社のコントロールシステムに組みこみ、システムソリューションとして提案する他、会議室や中、小規模のホール、学校などにも展開していきます。 この他に、プレゼンマトリクススイッチャー、ビデオマトリクススイッチャー、分配器、延長器などです。また、IP―KVMトランスミッター/レシーバー「KX99xx」シリーズは、5K解像度と10GbEネットワークに対応し、4K解像度で60Hz(4:4:4)や、フルHDでは240Hzまで対応できます。高画質および高速伝送のニーズが高まるeスポーツ関連や放送局、ポスプロ向けなどに展開していきます。 昨年のSEMICON Japanに展示したセキュアKVMスイッチにも期待しています。アメリカのセキュリティ関連規格に準拠した製品で、政府関連などに多数採用されています。日本でも同様のニーズが今後高くなると見ており、今年は本格的にプロモーションしていきます。この製品は分解して中の情報を抜き取ろうとすると、製品が破壊される仕組みになっています。また、パスワードなどの入力情報についてもすぐに消去されるので、情報の漏洩を防ぐことができます。政府関連だけでなく、ファイナンスや医療関連など、データの安全性を重視する業界に向けに展開します。 すでに発売されていますが、卓上オーディオミキサー「UC 8000」にも期待しています。個人用途に向けたデザインの為、お求めやすい値段設定の他、弊社のライブストリーミングミキサー「UC9040」と組み合わせることで簡単にライブ配信環境を構築することが出来ます。 この他HDMI/USBトランシーバー「VE1843」も注目です。4K60p&HDBaseT3・0に対応し、専用のCat6aケーブルで非圧縮の4K@60Hz 4:4:4HDMI信号を最大100㍍まで伝送でき、フルHDなら150㍍まで伝送できます。また、1ms以下の超低遅延を実現しています。 ――これまで積極的に拠点づくりを進めてきましたが、今後の計画は 鄧社長 2019年4月に九州営業所を開設、2020年9月には名古屋営業所を開設しました。今年は7月に広島営業所を開設する予定です。また、4月には現在駐在員しかいない仙台に小規模ですが、ショールームも設けて本格的な営業所とします。 従業員は更に1割増員する計画です。技術、プリセールス、ソリューション営業、マーケティングなどをそれぞれ強化するため増員します。営業所のメンバーは現地採用が理想ですが、当面は現在のメンバーで立ち上げて、その後引き継いでいく形になります。ATENは製品数が非常に多く、製品知識も必要なため、半年から1年かけて研修を行っています。人材の確保はどの業界でも課題だと思いますが、我々も苦心しています。 ――最後に今年の抱負をお願いします 鄧社長 昨年のインタビューでもお話ししましたが、ATENでは「社会貢献」と「社員への還元」に注力しています。社会貢献ではSDGsの一環としてグループ全体でカーボンニュートラルに取り組んでいます。ATENジャパンも同様に社会貢献に尽くす所存です。
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